Interview

美術館に来たみたいな発見がある。AAAMYYYが見つけた、書道の新しい見方

AAAMYYY

2026年のFUJI ROCK FESTIVALへの出演も決定しているロックバンド・Tempalayのメンバーであり、ソロアーティストとしても活動するAAAMYYY(エイミー)。幼少期から学生時代まで書道に親しんできた彼女は、久しぶりに筆を握り、「然」の一字と向き合った。

そこで見えてきたのは、書道が自分の内面を映し出すもの、というだけではない。文字の成り立ちや書体に目を向けることで、一文字の中に宿る物語や、まるで美術館を巡るような発見があったという。アーティストならではの視点で見つけた、書道の新たな魅力を伺う。

取材・執筆:飯嶋藍子、撮影:こまつこうへい、編集:丸田武史

書き写すことから、自分を書くことへ

──今日は久しぶりの書道でしたが、もともとは長く習われていたそうですね。

AAAMYYY:はい。小学1年生から中学3年生まで地元で習っていて、高校は軽音部やほかの部活と兼部しながら書道部にも入っていました。

――すごく長い期間習っていたのですね。

AAAMYYY:ただ、低学年の頃は外で遊びたいっていう気持ちのほうが強かったです。毎週水曜日の放課後に、公民館で1〜2時間、お手本を見ながら字を書く時間よりも、「早く遊びに行きたい」という気持ちのほうが勝っていて。6年生までは楷書(かいしょ)や行書(ぎょうしょ)、ペン字を習っていましたが、とにかく早く書いて提出していました。
そんな私も、中学生になると少しずつ書道のおもしろさに気づいて。初めて賞をいただいて、先生と父と一緒に東京の表彰式へ行ったんです。続けてきたことが一つの形になったことで、書道がぐっとおもしろく感じられるようになりました。

──大人になっても書道をする機会はありましたか?

AAAMYYY:いえ、全然ないですね。だから、久々に書いてみて、書道って、正しい姿勢で美しい字を書くことを通して、自分の内面と向き合うようなアクティビティだったんだな、と改めて思い出しました。
ちょうど最近、美輪明宏さんの本を読んでいたんですけど、そこに「内面を美しくありなさい」というような内容が書かれていて。それが書道とすごくリンクしたんですよね。書道を習っていた頃には言語化できなかった精神的な部分に、大人になった今だからこそハッとする気づきがあったというか。

──久しぶりに筆を持ってみて、子どもの頃との違いは感じましたか?

AAAMYYY:子どもの頃は模写がメインで、今まで一度も自分で即興で書いたことがなかったので、今日は普段音楽を作っている感覚が、少し影響した気がします。綺麗に模写するのではなくて、自分なりの字を書いてもいいなっていう新しい心持ちやパッションが湧き出てきて、すごく楽しく書けました。子どもの頃にはなかった、「自分の字を書いていいんだ」という感覚が新鮮でしたね。

着飾らない、背伸びしない。「然」が映した現在地

──今回、「然」という字を選ばれた理由を教えてください。

AAAMYYY:自然とか毅然とか、ありのままの状態を表すようなイメージがあったので「然」にしました。「粋」もいいなと思ったんですけど、私はそこにはまだ達していないので、自分の現在地という意味で「然」を選びました。

──AAAMYYYさんにとって、「然」はどんな一字なんでしょうか。

AAAMYYY:私にとって「然」は、着飾りすぎない、背伸びをしない、嘘をつかない。そんなイメージです。何かが起こってしまっても、「そっか」と思える器が少しずつ自分にもできてきたような感覚があるんですよね。どうしようもない出来事が起きると、昔は「もう!」って怒ったりしていたんですけど、それを超えて「うんうん」と受け止められるようになった。「然」は今の自分を表してくれている気がしてます。

──ありのままの自分に向き合うようになった背景には、結婚や子育てなど、ライフスタイルの変化もあったのでしょうか。

AAAMYYY:すごく影響していると思います。20代の頃は、SNSで自分の綺麗な部分やキラキラした瞬間を切り取って見せることが、わりと主流でした。でも、コロナ禍や社会の変化を経て、「自然体でいること」がいいんじゃないか、と考える人が少しずつ増えてきたような気がしていて。
私自身も、「自分を自分以上に見せることで、何が生まれるんだろう」と考えるようになりました。周りからどう見られるかより、自分自身が好きでいられるほうが、この先も楽しく生きられる気がして。

──お子さんと過ごす中で、その考えはさらに深まっていったのでしょうか。

AAAMYYY:そんなタイミングで結婚して、子どもが生まれました。自意識のない子どもを見ていると、自分もこんなふうだったんだなって思い出すんです。無邪気だった頃の自分に、もう一度憧れるようになったというか。それが、自分の内面を見つめ直すきっかけになりました。

漢字一文字の中に、先人たちの物語があった

――今回、「然」という字の成り立ちまで遡って調べていたのが印象的でした。

AAAMYYY:そうなんです(笑)。いろんな文字の初期段階まで遡って見ていくと、本当におもしろくて。この字も、形からできているじゃないですか。犬がいて、火があって……動物が火であぶられている様子を犬が見ているような形にも見える。「然」という字にも、ちゃんと意味があるはずなんですよね。

――漢字の成り立ちを"意味"として捉えるのも面白いですね。

AAAMYYY:そういう成り立ちを見ていると、「自然」とか「毅然」とか、全部どこかでつながっている気がして。だから私は、この字に惹かれたのかもしれないです。

――久しぶりの書道で、漢字そのものの魅力にも改めて気づかれたんですね。

AAAMYYY:そうですね。象形文字だったり、楷書(かいしょ)や行書(ぎょうしょ)、隷書(れいしょ)だったり、書体も本当にいろいろある。それを眺めているだけでも、すごくアーティスティックなんです。美術館に来たみたいな発見が、書道にはたくさん詰まっているなと思いました。

心と身体に、余白をつくる

――AAAMYYYさんは音楽制作の際にお寺にこもったり、年末年始のお休みの時に一人で数日過ごせる時間を作ったりしたそうですね。そうした時間は、ご自身にとってどんな時間になっていますか。

AAAMYYY:自分をリセットする時間ですね。私はちょっとした物音や気配にも結構敏感なタイプで、たとえば、夫が夜遅くに帰ってきた時にカチャッというちょっとした物音だけでも起きてしまう。無意識のうちにいろいろ感じ取るので疲れてしまうんですよね。これまではわけもわからず動いて、疲れて、寝て、みたいな日々だったんですけど、それに気づいてからはお寺に行ってみたり、実家が長野の山奥にあるので意識的に帰ってみたりしています。

――普段、心や身体をケアするうえで意識していることはありますか?

AAAMYYY:それこそ、自分をリセットする時間を設けることもそうですし、食べ物も気をつけていますね。産後1年半くらいの時にプチ断食をしたんですけど、すごく体調が悪くなってしまって。AIに聞いたら「あなたは今こういう身体だから、朝ごはんはタンパク質と脂質をちゃんと取りなさいね」と教えてくれたんです。
その時に、「自分の身体は食べたものでできているんだ」と改めて、ハッとして。子どもの食べ物には気をつかうのに、自分のことは後回しになってしまいがちだなとも感じましたね。

――その他にも、心を整えるために意識していることもありますか。

AAAMYYY:実は、Tempalayのオウンドメディアで文章を書く役割になったのも大きいですね。私は普段から言葉を発するというよりは内省するタイプで、言語化にすごく時間がかかるんです。でも、子育てをしている中で内省をしても最近は全部忘れてしまって。そんな中で文章を書くことで心が整理されるようになりましたね。

昔は書くための時間が、日常にあった

――ご自身の整え方が徐々にわかってきたタイミングなのですね。

AAAMYYY:そうですね。そういう意味で言うと、書道も今の自分の状態が可視化されると思いますよ。たとえば墨を擦るということ一つとっても、そのゆったりとした時間に耐えられないと思ったら、「あ、今の自分ってなんか急いでるな」と気づくと思いますし、雑念が多い時はそれが筆に伝わって線が乱れることもある。

――「然」という字を書いてみて、今のご自身はどんなふうに映りましたか。

AAAMYYY:最初は緊張と動揺をしていました(笑)。でも、全体的に自信を持って書けたと思います。音楽を作っている時やライブをしている時にゾーンに入る感覚があるんですけど、それと少し似ていましたね。曲を作っていても“降ってくる”みたいな境地の時もありますし、自信がある時は「なんでもできそう」と思えるくらい感覚が研ぎ澄まされる。その入口に少し触れられたような気がしました。

――久々に書道をしてみて、改めてどういう魅力があると感じましたか?

AAAMYYY:まず、多岐にわたる魅力があると思いますね。書道と聞いて多くの人が想像するのは、まずは美しく書くということだと思いますし、それはもちろんなのですが、それによって自分の内面と向き合うきっかけになることが魅力。でも、それだけじゃなくて、文字の成り立ちや書体を眺めるだけでも、美術館を歩いているみたいに発見がある。それも書道の魅力だと思いました。

――では書道を体験してみて、改めて「手で書く」という行為そのものについては、どう感じましたか。

AAAMYYY:私も譜面を作る時や、子どもとお絵描きをする時などは手書きですが、手で書くと愛着が増しますし、“書く”ってすごく些細な体験ですけど、身体で体験したことだからこそ記憶に残るものだと思います。
今はいろんなテクノロジーがあって、多様な文化にもすぐ触れられるし、すごく快適。でも、昔は手紙を書くにも帳簿をつけるにも、まず墨をすっていた。そういう時間が日常にあったことを思うと、もしかしたら今より豊かだったのかもしれないな、と思ったりもするんですよね。

プロフィール

AAAMYYY

長野県出身。シンガーソングライター、トラックメイカー。2017年よりソロ活動を開始し、2019年に1stアルバム『BODY』をリリース。2018年よりロックバンド・Tempalayに正式加入し、シンセサイザーとコーラスを担当する。ソロ活動では楽曲提供や客演など幅広く活動。繊細な感性と独自の世界観を生かしながら、日々の暮らしや内面の変化を音楽で表現し続けている。子育てと創作を両立しながら、自分らしい表現を探求する。

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長野県出身。シンガーソングライター、トラックメイカー。2017年よりソロ活動を開始し、2019年に1stアルバム『BODY』をリリース。2018年よりロックバンド・Tempalayに正式加入し、シンセサイザーとコーラスを担当する。ソロ活動では楽曲提供や客演など幅広く活動。繊細な感性と独自の世界観を生かしながら、日々の暮らしや内面の変化を音楽で表現し続けている。子育てと創作を両立しながら、自分らしい表現を探求する。

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初めての方も、再び筆をとりたい方も。
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