activity
2026.08.05
なぜ、フジロックで書道だったのか? 約3,700人が筆を持ったRelight the Write出展レポート

2026年7月24日(金)から26日(日)の3日間、新潟県湯沢町・苗場スキー場で行われた「FUJI ROCK FESTIVAL '26」に、「Relight the Write」プロジェクトの一環として書道体験ブースを出展。来場者に「今、ここで感じた気持ちを、書で自由に書く」ことのできる場を設けました。
3日間で書道を体験した人数は、約3,700人。音楽フェスの会場に、墨と半紙。一見、不似合いにも思えるこの組み合わせが、なぜ多くの来場者に受け入れられたのか? 本記事では、ブース誕生の背景や3日間の様子をたどりながら、苗場で見えてきた「書くこと」の新たな可能性をお届けします。
執筆:丸田武史
フジロックで見つけた、書道と重なる「余白」

「Relight the Write(リライト・ザ・ライト)」は、手で文字を書く機会が少なくなったいま、あらためて「書くこと」や書道の価値を、もっと多くの人と一緒に考えたい。そうした想いから始まったプロジェクト。
書道の新しい価値を見つける場としてフジロックを選んだ理由のひとつは、書道とフジロックの両者に共通する「余白」を感じたから。音楽の楽しみ方も、会場での過ごし方も、一人ひとりに委ねられている。そうした自由な余白は、筆を持ち、自分の感覚のままに文字を書くこととも、どこか重なるのではないかと考えました。

フジロックは、今年で29回目を迎えた日本最大級の野外音楽フェスティバル。公式発表によると、前夜祭を含む4日間の来場者数は延べ123,500人。来場者の多くは、音楽だけを目的にしているわけではない。自然の中で数日間を過ごし、日常から離れ、心が解放された状態にある。そんな人たちが筆を手にするからこそ、書道の新たな可能性が見えてくるのではないか? その問いから、今回の出展計画は始まりました。

ブースが置かれたのは、会場のいちばん奥にある「ORANGE CAFE」エリア。「第二のフードエリア」とも呼ばれ、会場内で唯一の屋根付き飲食スペースを備えた一角。2025年には、新たなステージ「ORANGE ECHO」が誕生し、ORANGE CAFEまで足を運ぶ人も増えたといわれています。
入場ゲートから歩き、いくつものステージを巡り、音楽や食事を楽しみながらこの場所まで辿り着く頃には、来場者の歩みもどこかゆるやか。そんな肩の力が抜けた空気のなか、来場者が筆を手に半紙へ向き合う姿も、不思議とよく馴染んでいました。

苗場で書かれた、さまざまな言葉

ブースでの体験は、とてもシンプル。「今、ここで感じている気持ちを、書で自由に書く」。ただ、それだけでした。
文字数や言葉の種類に決まりは設けず、書き直してもよく、使う言語も自由。書く内容をあらかじめ決めすぎず、一人ひとりが自分の感覚で参加できる余白を残しました。

何を書くか、しばらく半紙を前に考え込む人もいれば、筆を手にすると、迷うことなく書き始める人も。漢字やひらがな、カタカナのほか、中国語、韓国語、英語など、来場者はそれぞれの言葉で、いまの気持ちを半紙に残していきます。
書かれたのは、「我愛FUJI ROCK」「来れて嬉しい」といったフェスへの思いから、「水」「雨」「空間」など、そのとき目にしていた景色や天候、そして感覚を映した言葉まで。英語や韓国語で思いを残す人もいて、半紙には苗場で過ごす一人ひとりの「いま」が次々と残されていきました。





ここで生まれたのは、上手に書くことを目指した書(作品)というより、苗場で生まれた気持ちが、そのまま文字になったような書。同じ言葉であっても、筆の運びや文字の大きさ、墨の含ませ方は一枚一枚、当然異なる。そうした違いに、書いた人の気分や個性が自然とにじんでいることも、書道の面白さのひとつかもしれません。
また書道を体験した方には、筆ペンと付箋をセットにした「Relight the Write」オリジナルの筆記セットを贈呈。苗場で筆を持った体験が、フェスを離れたあとの日常にもつながってほしい。そんな願いを込めて、一人ひとりにお渡したノベルティです。

約3,700人の「書く」が生まれた3日間

3日間の体験者数は、計3,689人。各日1,200人を超え、約3,700人がブースで筆を手にしました(7月24日(金)=1,232人/25日(土)=1,237人/26日(日)=1,220人)。当初の想定を上回る反響となり、初日から昼の時間帯にはブースが混み合い、長い列ができる場面も。

また参加者の構成も、事前の想定とは異なりました。当初は海外からの参加者がもう少し多いと見込んでいましたが、現場の印象では、日本からの来場者が約8割、海外からの来場者が約2割。それでも、国籍や使用する言語を問わず、幅広い人が筆を手にする姿が見られました。そして天候が目まぐるしく変化するのも、フジロックならでは。晴れ間が広がったかと思えば曇り空に変わり、ときには激しい雨に見舞われることも。

ブースでは、書き上げた一枚を掲げて写真を撮る人や、友人や家族が筆を動かす姿を動画に収める人もちらほら。体験を終えた方からは、「面白かった」「気持ちよく、清々しい」といった声も。中には、自分が書いたものを持ち帰りたいという要望もたびたび寄せられ、書き上げた一枚への愛着がうかがえました。



一方、運営面では課題も残りました。こうした大規模なイベントへの出展は、運営スタッフにとって初めての経験。特に初日は、想定を上回る参加者を前に、オペレーションが円滑に進まない場面も。2日目、3日目と、現場で見えてきた課題を一つずつ見直しながら運営を改善していきましたが、急な雨への対応をはじめ、今後の取り組みに生かすべき多くの気づきも得られました。

3日間を通して強く感じたのは、フジロックを楽しむ人々と、「思いを書に託す」という体験との相性のよさ。形式にとらわれることなく、一人ひとりが自分なりの「書くことの価値」に触れていく。SNS上にも、完成した書や体験の様子を紹介する投稿が広がり、会場のブースを越えて反響が続いていったことも、嬉しいサプライズとなりました。
苗場から、次の「書く」へ

3日間を通して特に印象に残っているのは、最終日の19時近くに起きた出来事。スタッフがブースの片付けを始めていたところ、海外から訪れた一人の男性が立ち寄りました。書道体験を希望していると思ったスタッフが、この日の受付は終了したことを伝えると、彼は英語でこう声をかけてくれました。
「フジロックの中で、ここが一番よかったよ」、と。
晴れたり、激しい雨に見舞われたりと、天候に翻弄されながら駆け抜けた3日間。すべての運営を終えようとしていたスタッフにとって、そのひと言は率直にうれしいものでした。

今回のイベントで撮影したスナップ写真をまとめたコンテンツは、8月下旬からMoment”書くこと、その瞬間”として、公開予定。それぞれの言葉や表情に残された、フジロックの現場ならではの空気を、ぜひご覧ください。
「Relight the Write」は、今後もさまざまなイベントへの出展を予定しています。最新情報は、公式Instagram(@relight_the_write)にて、チェックをお願いします。





About
得られる教養と出会いは
一生ものの財産に。
日本習字は、日本の伝統文化である書道を
年齢・習熟度に応じた教材による学習機会の提供と、
全国約1万1千の習字教室への運営支援を通じて、
書を身近に感じながら学べる環境を提供しています。
全国に広がる学びのコミュニティは忙しい日常を整え、
自分自身と向き合える場でもあります。
初めての方も、再び筆をとりたい方も。
あなたのペースで始められる、豊かな学びがここから始まります。
日本習字は、日本の伝統文化である書道を
年齢・習熟度に応じた教材による学習機会の提供と、
全国約1万1千の習字教室への運営支援を通じて、
書を身近に感じながら学べる環境を提供しています。
全国に広がる学びのコミュニティは忙しい日常を整え、
自分自身と向き合える場でもあります。
初めての方も、再び筆をとりたい方も。
あなたのペースで始められる、
豊かな学びがここから始まります。