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“いいものさがし”の中で、筆をとる。「パンと音楽とアンティーク2026秋」Relight the Write出展レポート

2026年9月19日(土)・20日(日)の2日間、東京都調布市の東京オーヴァル京王閣で開催された「パンと音楽とアンティーク2026秋」に、「Relight the Write」プロジェクトの一環として書道体験ブースを出展。
7月のフジロックの出展に続く今回は、写真家・佐藤健寿さんを招いたトークショーも開催しました。2日間で1,166人が筆を手にした会場の様子と、トークの模様をお届けします。
執筆:服部桃子、撮影:こまつこうへい、編集:丸田武史
パンと音楽とアンティークで見つけた、書道と重なる「間(ま)」
「Relight the Write(リライト・ザ・ライト)」は、手で文字を書く機会が少なくなったいま、あらためて「書くこと」や書道の価値を、もっと多くの人と一緒に考えたい。そうした想いから始まったプロジェクト。書道の価値をこちらで決めて届けるのではなく、さまざまな人に筆を持ってもらうなかで、一人ひとりにとっての新しい価値を一緒に探していく。だからこそ、人が集まる場所へ、自ら足を運んでいます。
今回出展した「パンと音楽とアンティーク」は、おいしいパンと、良質な音楽、そして日々に寄り添うアンティークが集い、五感で“いいものさがし”を楽しむイベント。

フジロックの次の出展先を考えるなかで大切にしたのは、会場に流れる時間や空間そのものを、ゆったりと味わえるイベントであること。半紙を前に「何を書こう」と考える、あの「間(ま)」を大事にできるイベントであることが欠かせなかったからです。
そしてもうひとつ、手間をかけて古いものを選び、長く使い続けることを楽しむ人たちは、効率や便利さだけでは測れない、心の豊かさを大切にしているのではないか。そんな人たちとなら、書くことの新しい価値を一緒に見つけられるかもしれない。そう考え、本出展につながりました。

ブースを構えたのは、古着やアンティーク雑貨、ヴィンテージ雑貨の店が軒を連ねる「蚤の市ストリート」エリアの一角。年季の入った食器や家具、古いカメラなど、長い時間をくぐり抜けてきた品々を眺めながら歩いてきた人が、ふと足を止めて筆を手に取る。墨と半紙という、これもまた古くから受け継がれてきた道具が、この風景に静かに溶け込んでいました。

"いいものさがし"の会場で生まれた、さまざまな言葉
来場者の中心は、カップルや友人同士で訪れた20代〜30代の2人組をメインに、あわせて、50代・60代の方の姿も多く見られました。また京王多摩川駅からすぐという土地柄もあってか、子ども連れで体験する家族の姿も。ブース内では、何を書こうかと思案する人、同行者と相談しながら書く人、一人静かに半紙と向き合う人。書き上げたあとは、うれしそうに自分の文字を写真に収める人もいました。

1日目は、朝から雲行きが怪しく、やがて雨が降り出すタイミングも。次第に雨脚は強まりましたが、それでもブースには体験を希望する方が次々と訪れます。なぜ、そこまでして書きたいのか。スタッフが思わず理由を尋ねてしまうほど、強い雨のなかでも筆をとる人の姿が絶えませんでした。

体験した方からは、「子どもが小さいころは宿題で一緒に書道をしていたけれど、それっきり。久しぶりに書いたら、また習いたくなった」といった声や「30年ぶりの書道で楽しかった」といった声も。中には「フジロックで書道体験を逃したのが悔しくて、リベンジしに来た」という人もいました。
書かれた言葉も、人の数だけあります。小学校で習ったばかりの字を書いた女の子、娘さんを想って書いたお母さん、「お金持ちになりたい!」と願いを込める人。また「海外逃亡」と心の声を書く方や、「好奇心」の三文字に今の気持ちを重ねる人も。



書道を体験した方には、筆ペンと付箋をセットにしたオリジナルの筆記セットを贈呈。休憩スペースでパンとコーヒーを片手に、さっそく筆ペンで付箋に文字を書き、自分たちの持ち物に貼っているカップルの姿も見られました。
佐藤健寿が考える「撮れすぎない」偶然性と、半紙に書いた「奇」の文字

19日(土)には、世界各地の"奇妙なもの"を撮り続け、写真集『奇界遺産』シリーズで知られる写真家・佐藤健寿を招いたトークショー「なぜ人は、古いものに惹かれるのか? Presented by Relight the Write」を、トークステージにて実施しました。
トークは、佐藤さんが愛用するカメラの話からスタート。約100年前から基本的な形を変えずに続くカメラブランド・ライカ(Leica)に、1976年製のレンズ。しかし、古いものを使う理由は決して懐古趣味だからではないといいます。
最近のカメラは、撮れすぎちゃうんです。この時代のレンズには不完全さが残っていて、逆光が思いきり写り込んだりする。でも、それが写真に偶然性を呼び込んでくれるんです。

また、佐藤さんが世界各地で撮影してきた廃墟の写真をスクリーンに映しながら、なぜそうした場所に惹かれるのかも語られました。
変な構造物が生まれるには、必ず変なストーリーや歴史がある。表面的なビジュアルよりも、その建物が“こうならざるを得なかった”物語に惹かれるんだと思います。
話題は書道へ。普段は原稿もパソコンで書き、手書きの機会はほとんどないという佐藤さん。小学生ぶりに筆を持ち、自身の著作にも通じる「奇」の字をしたためました。

“奇”という文字には、奇妙という意味もあれば、独創的という意味もある。以前、ある学者の先生から、この字はもともと大きな川が曲がる場所に由来し、物事が変化する兆しを表していると教わりました。最初は変だと思われたものが、次の時代の新しいものにつながることもある。
そういう可能性をはらんだ字だと思っています。
さらに、手で書くことについてはこんな実感も。
字には、その人のコンディションがすごく表れますよね。焦っていると下手になるし、落ち着いているときれいに書ける。字を通して、自分の状態が客観的にわかるんです。本のラフを考えるときも、パソコンやタブレットだと、思考が画面に出るまでにほんのわずかな遅れがあって、それがアイデアを滞らせる。手で書くのはダイレクトな行為だから、いまの時代でも紙に書くことが求められているのかも。

そのうえで、トーク内では、情報があふれる時代において、あえて不完全なものや余白が求められているのではないかといったトピックスも。そんな話の流れから、佐藤さんは会場を見渡してこう続けました。
パンやアンティークも、みんなそういう"余白的なもの"を求めて、ここに集まっているのかもしれませんね。
最後に書いたのは「有為転変」。あらゆるものは移り変わり、何ひとつ一定ではないという意味を持つこの言葉は、佐藤さんが過去に座右の銘としていたこともあるとのこと。筆をとる前に佐藤さんが口にした「上手さはどうでもよくて、自分らしくあることが大事なんですよね」というひと言は、このプロジェクトが大切にしている想いとも重なるものがありました。

「懐かしい」から始まる、書くことの日常へ
書道ブースにおける2日間の体験者数は、計1,166人。1日300人という当初の目標を大きく上回り、雨の中にも関わらず会場では、本当に多くの方に筆を持っていただきました。

今回印象的だったのは、「懐かしい」と言って筆をとる人の多さ。明確な理由があるというより、なんとなく書きたくなった。そんな気持ちで気軽に立ち寄ってくれる人が多かったのは、誰しも、どこかに書道の記憶を持っているからなのかもしれません。
都心から電車で1時間ほどの場所で開かれた今回の2日間は、日常を離れて過ごすフジロックとは異なり、まさに「日常の延長」にある時間でした。暮らしのすぐそばで筆をとり、書くことを楽しむ。そんな体験が、書道をもっと身近な趣味へとつなげていくきっかけになるのではないか。そんな手応えを感じた2日間にもなりました。

今回のイベントで撮影したスナップ写真は、Moment”書くこと、その瞬間”に、公開予定。「Relight the Write」は、今後もさまざまなイベントへの出展を予定しています。最新情報は、公式Instagram(@relight_the_write)にて、チェックをお願いします。





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得られる教養と出会いは
一生ものの財産に。
日本習字は、日本の伝統文化である書道を
年齢・習熟度に応じた教材による学習機会の提供と、
全国約1万1千の習字教室への運営支援を通じて、
書を身近に感じながら学べる環境を提供しています。
全国に広がる学びのコミュニティは忙しい日常を整え、
自分自身と向き合える場でもあります。
初めての方も、再び筆をとりたい方も。
あなたのペースで始められる、豊かな学びがここから始まります。
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